古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

あいさつ。妖怪について。

ようこそ! よくお越し下さいました。 こちらは妖怪しか描かない画家が、2016年から4年かけて書き溜めた「妖怪画」とその「怪説」を紹介するブログ形式の展覧会場です。 コロナ禍真っ只中、横浜みなとみらいの「みなとみらいギャラリー」で開催していた「古…

《索引》作品一覧

#増田よしはる #古今妖怪事展 #ネット会場 《索引》 佐脇嵩之『百怪図鑑』より #001 見越入道 #002 しょうけら #003 ひょうすべ #004 濡れ女 #005 河童 #006 元興寺 #007 ぬらりひょん #008 火車 #009 姑獲鳥 #010 ぬっぺっぽう #011 はゐら わ…

#100 ほら貝

ほら貝 法螺貝は「出世法螺」と言って、海に千年、川に千年、山に千年棲み、大蛇になってからを抜け出すともいわれる。和歌山県の白浜に伝説が残る。 大げさに言い立てられた作り話のことを「ほら話」というのは、以上の伝説から来ている。「ほら」が意外な…

#099 白澤 はくたく

白澤 中国の霊獣。『和漢三才図会』によると東望山に棲み人語を話し時の王者が有徳で、さらにその徳が明照幽遠なときにのみ姿を現すという。そう言う訳だからここ最近は中国はおろか世界のどこにも表れない。昔、黄帝が東望山に至った際に姿を現したとされる…

#098 神獣 しんじゅう

神獣 南方の山中に棲む巨大な昆虫で朝に三千夕べに三千の諸々の虎鬼を食すという。(しかし、それが毎日続いても居なくならないくらいに世の鬼の数が多いのだろうか)元の絵は「辟邪図」と言って中国の民間信仰でいうところの邪鬼を退治する神々の図の一つな…

#097 神社姫

神社姫 江戸後期の文人、加藤曳尾庵(かとうえびあん)が江戸の世相風俗について記した随筆『我衣(わがころも)』に以下の話が紹介されている。 文政二年(1819年)四月十九日、備前国の浜辺で「大きさは二丈(6m)ほど、角を生やした人魚が現れ「我は竜…

#096 九尾の狐

九尾の狐 江戸時代以降に作られた半纏の「裏地の」デザインで表は無地である。こういう「基本的には見せない裏側だけのファッション」と言う発想は世界でもまれなのではないのか。中国でも古典に登場し神獣であったとか人をたぶらかす悪い狐だとか言われるが…

#095 雷獣

雷獣 連作中唯一の縦構図であるため、表示サイズをそろえてアップできなかった。 カミナリの落下とともに駆け下りてくる獣(と言うか蟹?)が雷獣である。落雷した木などに大きな爪痕を残すという。なるほど破壊力がありそうな爪を持って描かれている。普段…

#094 鵺 ぬえ

鵺 たった一回出現しただけなのに、日本で知らない人がいないのではないかと言うくらい有名になっている妖怪。一方退治した人物が源頼政だと云うのは鵺を知る人の何割が知っているだろうか(私もメモを見ながら書いた)。基本的には英雄伝説を作るための妖怪…

#093 片輪車 かたわぐるま

片輪車 実は意外と少ないのが「恐ろしい妖怪」。しかしこの片輪車だけは非常に恐ろしい妖怪だと言っていい。夜な夜な女の乗った片輪の車が炎に包まれながら市中を徘徊する。子供をさらう事がある。見てしまうだけでも祟るし、そのことを口外しようものなら更…

#092 豆腐小僧

豆腐小僧 妖怪だと言われなければ豆腐を持ったただの子供だ。幕末から明治時代にかけて「キャラクター」として愛され、錦絵、凧の絵、双六などの玩具のイラストや、狂歌や川柳、読み物などの題材として活躍した。 さげてゆく おかべの雨の ふりかへり にらむ…

#091 うその精霊

うその精霊 川崎市市民ミュージアムが所蔵する「化物絵巻」には、おおむね『化物尽くし』と同じ妖怪が掲載されているが、この「うその精霊」だけは別である。この絵巻でしか見ることができない。「うそ」とは鳥の一種。「鷽」である。元の絵でも服の柄として…

#090 天狗星 てんぐせい

天狗星 天狗星とは、落下の際音響を発し明るく輝く巨大な流星のこと。鎌倉中期(ちょうど元寇の頃)に著された書物「塵袋=ちりぶくろ」にその記述がある。ちょうどその時期に日蓮宗の祖、日蓮が龍ノ口で幕府に処刑されかかったとき流れ星が現れたという記録…

#089 邪魔 じゃま

邪魔 おそらくだが、鳥山石燕が『画図百鬼夜行』に描いた「天逆毎=アマノザコ」、または「天邪鬼=アマノジャク」のことを指しているのだろうかと思う。天逆毎は天狗や天邪鬼のルーツとされる妖怪で、和漢三才図絵などにその記述がある。体は人間、首から上…

#054 赤舌 あかした

赤舌 大きく口を開き、髪を振り乱し、二つに割れた舌を突き出した姿に描かれる。両目は飛び出している。『百怪図鑑』で「あか口」と紹介される妖怪と同一とされているが、よく見ると名前が違い、さらにビジュアルも百怪図鑑と全く違うので(この絵巻物全体と…

#088 瓢箪子 ひょうたんこ

瓢箪子 何ともユーモラスな味わいの妖怪。瓢箪に見えなくもない胴体からカエルのように手足が生えている。一つだけの丸い目と、舌をちょろっと出した口元がとぼけた感じを出している。この絵巻の隣には「のづち」が描かれているので、カエルの妖怪かもしれな…

#087 王魔 おうま

王魔 「魔王」ではなく「王魔」である。国語の修飾語のルールで考えると、「魔王」なら「魔、つまり魔物や魔人やそういったものを支配する王=役職」であるのに対し、「王魔」は「王となるべき力や格を身にまとった魔物=真の力量」と言う事であろうか。どち…

#086 姥が火

姥が火 老婆の顔が見える怪火。『百妖図』には何故か違うデザインで二体紹介されている。経緯はわからないが、関西に伝説が二つあるからだろうか。二つのうち、より見たことがない方の(変わった)デザインを採用した。こちらは巻物の最初のあたりに描かれて…

#085 骸骨

骸骨 ここからは幕末の奇書(とはいえ妖怪図鑑は大体が奇書だが)で、一時はパリにあったが現在は(私の知識が古くなければ)神保町の古本屋が所蔵しているはずの「百妖図」から何体かを紹介していく。いくつかの出版物に掲載されているのだが、画像が小さく…

#084 家鳴り

家鳴り 家をギシギシきしませる妖怪。昔の木造建築は古くなるとギシギシいいだす物だが、それは住人の体重の所為でもなければ大工の所為でもない。この「家鳴り」の所為なのだ。最近の鉄筋コンクリートの家にはほとんど出ないが、出るときには多数の死者を出…

#083 おそふ

おそふ この妖怪絵巻にのみ登場する妖怪。したがって伝承も何もないが、描かれたということは少なくとも作者にとっては「おそふ」は(この絵巻に共に描いたほかの妖怪と同じぐらいには)確かな存在だったということになる。同時に名前と姿だけで他人にも「何…

#082 大坊主

大坊主 僧侶の姿をした大きな犬が「しらちご」に何か講義でもしているように描かれる。扇子を立てて口を開く姿は講談師のようだ。 いつの時代も教育行動に熱心すぎる教師は周囲から奇異の目で見られることが多い。出来ない生徒との間には「支配・非支配」の…

#081 白児 しらちご

白児 大体は「犬神」の脇に描かれる妖怪で、独立した存在としての個性を持っていないようだ。多くの図版で「犬神」に従うもの、という性格が表現されている。大体は「頭のよくなさそうな子供の姿」を与えられている。 この『化物尽くし』の白児は、少し様子…

#080 とうびょう

とうびょう 湯本豪一蔵『化物尽くし』と言っても、前回までの物とは別の巻物だ。『化物尽くし』登場する妖怪は日本古来の妖怪絵巻を踏襲しているものの、その作風は今迄にあったものとは異なり柔らかいタッチになっているのが特徴だ。 とうびょう、とは中国…

#079 波蛇 なみじゃ

波蛇 うねる波がまるで蛇のように見えるさまを妖怪と見たものか。確かに海の波、川の流れ、焚き火の炎と煙など、延々と繰り広げられるその変化をいつまでも見続けていたくなるもが世の中にはある。特に船に乗って見る波は、船が作り出す波と本来の波とが混ざ…

#078 蟹鬼 かにおに

蟹鬼 ここまでの妖怪達とは逆に、いくらでも解説がつけられそうなのがこの蟹鬼である。蟹の鬼なのだから妖怪で間違いない。 蟹の妖怪話で有名なのは「なぞなぞを出す妖怪」の話だ。無人の荒れ寺に泊った旅の僧の前に夜中、巨大な僧が姿を現してなぞなぞを出…

#077 飛代路理 びよろり

飛代路理 またまた説明のつけにくい妖怪が現れた。ただただ蛇である。ちょっときれいな色をした蛇が波打つような姿で描かれている。蛇は確かに「人が本能的に嫌う生き物」と言う説が出たり聖書では人間の欠点を神の前にさらけ出させる役割を担う悪役であり「…

#076 充面 じゅうめん

充面 もしこれが「渋面」なら、渋い顔した妖怪として「江戸の渋い顔事情」を調べ怪説とするのだが漢字は「充面」だ。「充」の字は「ふくよかな人を表す文字。おなかが大きい人が立っている姿だ。体力も気力も満ちているため、「満ちる」「あてる」「ふさぐ」…

#075 滅法貝 めっぽうかい

滅法貝 大きく描かれた二枚貝と思しき姿の妖怪。貝なのにネズミのようなひげや、蝙蝠のような羽や小さな目、本当はネズミのしっぱも生えている。今回は絵にする際、貝の性格を前に出すためにネズミっぽい尻尾を割愛し、代わりに貝の脚と水管を描き足し、鳥山…

#074 真平 まっぴら

真平 ふんどし一枚でまばらな無精ひげ、ネズミのようないかにも力のなさそうな妖怪が、地面にりつくようにひれ伏したまま、上目遣いに辺りを窺って居る姿で描かれている。先ほどの「有夜宇屋志」よりもさらに腰が低い。ただもう世の中が怖くて怖くて、他者と…