古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#099 白澤 はくたく

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白澤

  中国の霊獣。『和漢三才図会』によると東望山に棲み人語を話し時の王者が有徳で、さらにその徳が明照幽遠なときにのみ姿を現すという。そう言う訳だからここ最近は中国はおろか世界のどこにも表れない。昔、黄帝が東望山に至った際に姿を現したとされる。森羅万象に通じ中国にいる11520種の妖怪について教え、黄帝はそれらを画家に描かせ天下に示しそれらの害を防ごうとした。これが本来の「白澤図」というものだが現在には伝わっておらず今は「白澤図」というと、この神獣を示した辟邪絵のことを指す。

 白澤図と一口に言っても、描かれる白澤の姿は一様ではない。一番人気は牛の様な胴体に獅子を思わせるたてがみ、ひげを生やした男性の顔には角と三つの目、胴体にも左右三つずつの目があり、天女の羽衣のように炎をまとった姿で描かれるものである。こう言った辟邪絵は専門の絵師が描かなかったのか画力に乏しいものばかりが残っている。または、本物たちはその性質ゆえに各所に「秘蔵」されているのかもしれない。というくらい、出来の良い絵を見ない。

 この絵はそんな白澤の中で、一番よく描かれていると私が思ったものを参考にした。鳥山石燕作『古今百鬼拾遺 雨の巻』の白澤を本来の構図の反対側から描いたものである。漢文はそのまま引用した。

 「白」という字は「百」から「一」を引いたもの「九十九」を指すこともある。画面左の水生植物は「つくも」という。そしてこの絵自体が、この連作中、九十九番目の作品となる。

 あと一枚で「百」なので「百薬の長」である酒や「百代の過客」である「月日」も描き足して、絵がうるさくなってしまったが、最後にもう一匹、紹介する妖怪がある。

 図:鳥山石燕『古今百鬼拾遺 雨』より。