古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#085 骸骨

f:id:youkaigakaMasuda:20200517021827j:plain

骸骨

 ここからは幕末の奇書(とはいえ妖怪図鑑は大体が奇書だが)で、一時はパリにあったが現在は(私の知識が古くなければ)神保町の古本屋が所蔵しているはずの「百妖図」から何体かを紹介していく。いくつかの出版物に掲載されているのだが、画像が小さくて細部がわからないので絵にするに心許無い。何体かは大きい画像で掲載されているのでその分だけを絵にしたが、もしきちんと見ることができれば絵にしたい妖怪がたくさん掲載されている。誰かが出版しないと資料にあたれないところにはアマチュアの限界を感じる。まあ人生は長いからそのうち。

 骸骨が妖怪に認定されている。珍しいことではない。鳥山石燕も「画図百鬼夜行」の中で「骸骨」を紹介している。確かに骸骨が動いたら妖怪だし、何と呼ぶかと言われたら「動く骸骨」としか言えない。しかし「百妖図」の骸骨は、骸骨と言うにはあまりにも肉がつきすぎている。「餓鬼ではないか」と思わせるくらい、骨が少ない。丸い腹はあるし、目玉はついているし、皮膚の色は黄色(肌色?)で、背中から火を噴いている。まるで火葬でうまく焼けなかった遺体のようななりだ。もちろんただの骸骨よりもよほど「妖怪的」だ。

 考えれば面白いものだ。「骸骨」が妖怪であるならば、我々の身体の中には妖怪が埋まっている。火葬されることで妖怪が露出し、大部分の肉を失った人は妖怪へと変質すると言う事か。「カソウで人が妖怪になる」のなら、まるでハロウィンだな、と思ったらカボチャを描いてしまった。駄洒落以外の何物でもない。

 図:大屋書房『百妖図』より