古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#084 家鳴り

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家鳴り

 家をギシギシきしませる妖怪。昔の木造建築は古くなるとギシギシいいだす物だが、それは住人の体重の所為でもなければ大工の所為でもない。この「家鳴り」の所為なのだ。最近の鉄筋コンクリートの家にはほとんど出ないが、出るときには多数の死者を出す。と言うとか言わないとか。

 家の中で頻繁に起きる物理現象の呼び名が妖怪の名称になってしまった。似たような例は「紙舞い」だろうか。また現象への名称がいつしか妖怪の存在を指す名前になってしまった過程を面白く描いた笑い話が、「ふるやのもり」だろう。

 西洋でいうところのポルターガイストと同じ存在だという考えには反対。家鳴りは人に取り憑いたり家具を浮かせたりはしない。家鳴りは悪魔とも悪霊とも関係のない妖怪で、現象こそ一部だけ似てはいるが本質的な違いがある。対処法にしてもエクソシストを呼ぶくらいなら大工かシロアリ駆除業者を呼ぶ方がまだ気が利いている。

 奥に描いた鬼の服の柄はシロアリ。手前の柱にもびっしり描いた。この動物の習性は妖怪と何の変わりもないものだと感じる。生き物としてリアルに存在していたら「妖怪でない」と言う考え方にも反対。もし河童やツチノコが捕まったら、その瞬間から妖怪図鑑から消え去り、動物図鑑に載るのかな? じゃあ狐や狸はどうなっているの?

 図:湯本豪一蔵『化物尽くし』