古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

104 #輪入道

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鳥山石燕画図百鬼夜行等で紹介される妖怪。
車輪の中央に入道の顔があり、夜の街を転がるが、見ると子供を拐われたりする。片輪車と同じような物語を共有する。
下に流水紋を描き、輪入道の車輪とあわせて、「片輪車紋様」を作った。

さて、妖怪絵師を悩ませる数々の問題の中に、「輪入道問題」というものがある。輪入道は絵にしにくいのだ。理由は二つある。
一つ目は、頭と車輪がどう繋がっているのか判らない問題だ。石燕の絵では、輪入道の頭は車の中心と同化している。だから普通に考えれば、輪入道の顔は車輪と共に回転するのが常識だ。車軸は顔の側面に刺さるように生えているからだ。しかし、漫画やアニメでは、顔は回転せず、地面と平行に保たれたまま、周りの車輪だけが結構な早さで回転している。あれでは顔は前後に分断されてしまう。だから妖怪絵師たちは、描く角度を誤魔化すなどして、正面対決を避けて、輪入道を描いてきた。
加えて、車輪を正確に描く技術的な難しさがある。車軸の間隔などの細かな設計の把握や、車輪のデザインの研究も必要だ。だから世の「手がき派の妖怪絵師」達はこの妖怪を描く際は極力正面から描き、車軸などの構造は誤魔化して描いてきた。
という訳でこのデザインである。哪吒のようなイメージを考えた。すなわち頭を車輪から解放する事で、前者の問題の答えとした。また車輪の取材を広く行い、斜めからの角度で描いた(こちらはまだまだ課題の残る出来)。この絵が、検索しても中々出てこない輪入道の絵の新な一枚となり、「輪入道問題」に一石を投じて貰えることを願う。