古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

108 #歯黒べったり

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お歯黒で真っ黒になった口、以外はのっぺらぼうの顔を、人に見せて驚かせる妖怪。背を向けて登場し、振り向けばもうクライマックス。真っ黒な口でゲラゲラ笑うと言う、洗練された「脅かしのテクニック」を使う。
江戸時代後期の書『絵本百物語』にて紹介されているする妖怪で、神社の付近に出没した、とある。当時は神社参拝に行く女性はきちんとおめかしをし、良い服を着て出掛けたらしく、絵のような角隠しも着けたようである。

妖怪話の定番のパターンに、再度の怪、と名付けられたものがある。同じ人間が、ある怪異から逃げ切ったと思ってほっとしてその場の人に体験を話すと「貴方が出会ったのは…。こんな奴でしたか!」と、同じ怪異に遭遇する、と言う筋書きである。のっぺらぼうや、朱の盤などが有名だ。
歯黒べったりは、このパターンの話ではないのだが、見返り美人を妖怪にして見たくて、親類であるのっぺらぼうに重ねて、再度の怪をイメージするように顕した。

手に持っているのは、切り子灯籠。お盆の時に軒などに吊るすもので、鳥山石燕画図百鬼夜行(多分あみきり)にも見られる。牡丹灯籠で幽霊が持っているのも、牡丹の造花を付けたコレ。西日本では今でも大きなものが創られている。