古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#090 天狗星 てんぐせい

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天狗星

 天狗星とは、落下の際音響を発し明るく輝く巨大な流星のこと。鎌倉中期(ちょうど元寇の頃)に著された書物「塵袋=ちりぶくろ」にその記述がある。ちょうどその時期に日蓮宗の祖、日蓮が龍ノ口で幕府に処刑されかかったとき流れ星が現れたという記録があるから、関連があるかもしれない。

 古代中国では司馬遷の「史記」の中で天狗の姿について流星のようだと説明しており、ここに天狗と流れ星が同一視されていたことがわかる。

 流れ星や隕石は、かつては立派に妖怪だったのである。ちなみにハレー彗星がやってきたのは、江戸時代だと1607年、1682年、1758年、1834年である。

 翻って現代。人工の星に人を詰め込んで、宇宙に送り出すことができれば先進国の仲間入りだ、かつてそのような風潮が世界にあった。国民の税金で予算が組まれ国民の労働で開発は進んだ、宇宙に人を送り出した国は天狗のように鼻高々だった。それだけで世界の先頭集団に加わった気持ちを持つことができた。

 21番目の天狗が、日本国である。

 『百妖図』からの紹介は此処でひとまず終わり。本当はもっと描きたい妖怪があるので、詳細な図版が手に入ったら描こうと思う。例えば「蛇身」「油なめ」「うや免」「野襖」「夜入道」「野頭地」「放頭」「雪坊主」などである。

 残り十体は、いろんなところから題材を集めてこようと思う。

 図:大屋書房『百妖図』より