古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#079 波蛇 なみじゃ

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波蛇

 うねる波がまるで蛇のように見えるさまを妖怪と見たものか。確かに海の波、川の流れ、焚き火の炎と煙など、延々と繰り広げられるその変化をいつまでも見続けていたくなるもが世の中にはある。特に船に乗って見る波は、船が作り出す波と本来の波とが混ざり合って、いくら見ても見飽きることがない。もしそんな中、海流か何かの作用で、本当に蛇のようにうねる波を一瞬でも見たとしたら、または波しぶきが細長い水となってSの字を描くように飛び去るのを見たら私でも妖怪に出会えたと信じて疑わないだろう。私は旅先でもよく船に乗るので、そのうちにこの波蛇に出会えるかもしれないと思い、船に乗るたび目を凝らしている。

    あるいは、江戸に目撃されたシーサーペントかもしれない。波間の巨大ヘビ。実は江戸時代にはいたのであろうか。

 「波に千鳥」の言葉の通り、周りに千鳥を配置した。妖怪のデザインが良いと、あまり飾りを追加する気にならない。

 図:湯本豪一蔵『化物尽くし』

 これで『化物尽くし』の妖怪もすべて紹介し終えた。思うに、世の中に民俗学者はたくさんいるし、妖怪の研究家も星の数ほどいる。その中で、「図象学」的見地、書き手へのアプローチから妖怪を推理する人はまだ少ない。私のようなアマチュアは、研究にお金はかけられないが、自由な発想で後の研究にヒントを出すこちはできるかもしれない。化学、心理学、その他すべての雑学を総動員して、妖怪を解明したいと思う。後の「本物の探究者」が、きちんとお金をかけて真相にたどり着く階段の一段くらいに成ればいいなと思っている。ブレインストーミングのお手伝いだ。

 新たな妖怪絵巻に移ろう。