大体は「犬神」の脇に描かれる妖怪で、独立した存在としての個性を持っていないようだ。多くの図版で「犬神」に従うもの、という性格が表現されている。大体は「頭のよくなさそうな子供の姿」を与えられている。
この『化物尽くし』の白児は、少し様子がちがう。まず彼を従えている妖怪は「犬神」ではなく、これまた大きな犬の姿をした「大坊主」である。両者の関係は先生と生徒であるかのように描かれている。大坊主は袈裟を着ているので寺子屋における師弟関係を描いているように思われる。
鳥山石燕の「画図百鬼夜行」では犬神は神主の様な佇まいをしており、この絵では人の姿をした白児が書き物をしている。ちなみに当時、貴族に使える「ひにん」も居て、その姿は白装束だったそうだ。「しらちご」の名の由来はそのようなところのあるのだろうか。石燕の死後10年くらいして寺子屋が登場した結果、時代に合うように妖怪の設定に変更が加えられたのかもしれない。
ちなみにこの「化物尽くし」にはちゃんと神主のような姿の「犬神」が別に描かれており、大坊主に弟子を取られて一人ぼっちで舌を垂らした姿で描かれている。
図:湯本豪一蔵『化物尽くし』