湯本豪一蔵『化物尽くし』と言っても、前回までの物とは別の巻物だ。『化物尽くし』登場する妖怪は日本古来の妖怪絵巻を踏襲しているものの、その作風は今迄にあったものとは異なり柔らかいタッチになっているのが特徴だ。
とうびょう、とは中国四国地方でいうところの憑き物の一種。姿の無い狐と言う説もあるが、普通は手のひらに入るほどの首に金の輪ある蛇の姿だと言われる。所有者の意志で人に憑いたり災いをなしたりし、所有者を富ませるという。憑かれると体の節々が激しく痛む。
地方によって呼び名が変わり、トンベ神、トンボ神、トボ神、トウバイ、土瓶神と呼ばれる。おそらくこの「土瓶神」と言うのが本来の語義と思われ、家の地下に置いた土瓶の中で蛇を飼育しているという伝承がある。屋敷内に放す家もあると言い、飼い方は地域によって細部が異なる。75匹など群れの数が決まっていることが多い。人に憑くとき以外は目に見えているという。
頭のはちまきは時代劇でたまに見る。紫には病魔を退散させる力が有るとされ、病気のお殿様が頭に巻いている。「闘病」の駄洒落。
図:湯本豪一蔵『化物尽くし』