古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#048 白うかり

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白うかり

 「うかる」とは古語で、①自然に浮く、浮かぶ。②あてもなくさまよう、ふらふら出歩く。という意味。つまり白くてふわふわ漂う怪異と言う事。欧米でいうところの「シーツお化け」。古今東西を問わないお化けの基本中の基本の姿と言える。

 廃屋や夜中の河原でふわっと白い影のようなものを見る、次の瞬間には消えている。お化けが出る以前の気配のような存在、怪異の内に数えられない怪異、それでいて怪異の発生にはなくてはならない怪異。そういう微妙な感じに名前と姿を与えた作者の感受性に感嘆する。

 そんな妖怪だからこそ王道の背景である柳を描いた。柳の下に白い影。ここからすべてが始まる。基本と初心は忘れてはいけない。柳に飛びつくカエルを小野道風が目にし、努力の意味を理解したという逸話を思い出し、柳に飛びつく蛙を描いた。

 図:尾田郷澄作『百鬼夜行絵巻』より