尾田郷澄作『百鬼夜行絵巻』では名前を与えられていない妖怪で、絵だけが乗っている。作者が名前を書き落としたとは考えにくいから、この絵巻物は「今迄に名前または姿が残されている妖怪を描きとめようとした」ものだったかとも思う。他の妖怪絵巻では、「はじっかき」の名で紹介されている。
たしかに、すごく頼りなさそうな妖怪である。まあ頼りがいがある妖怪というのもおかしな話だが。お尻が大きい姿が特徴だが、全体がお餅のように白いので「しりもち」の駄洒落か何かだろうか。自分の情けなさにしりもちをつくのだろうか。
何をやってもダメダメ、グダグダで、反省の色もない人に取り付いていそうな妖怪だ。お米を洗剤で洗ったり、切手を貼らずに手紙をポストに入れたり、遅刻したり、携帯を海に落としたり、そういったものに関与しているのだと思う。
端を欠く、の駄洒落で、欠けたお皿を描いた。絵の画面の端に柿を描いたのも駄洒落。「端に柿」である。よく見たらこの絵の端も…
図:尾田郷澄作『百鬼夜行絵巻』より