古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#062 狸の腹鼓

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狸の腹鼓


 「はらづつみ」ではない。「はらつづみ」である。間違うと料理名のようだ。

 人気のない山中、夜の街中で太鼓の音やお囃子が聞こえる。狸囃子ともいう。もちろんいくら探しても何もない。特に太鼓の音は狸が膨らませたおなかをたたいているのだと言われ、腹鼓と呼ばれる。満月の夜に多いとも聞く。

 どこの伝説か忘れてしまったが、狸が腹鼓を打つと化け猫は踊るのだという。「狸鼓を打てば猫又舞う」という言い回しがある。事件が起こると続いて別の事件が起こるという意味だそうな。

 鳴る筈の無い音が鳴る怪は全国無数にあるし誰でも体験しうる。妖怪の本質は「説明できない不思議な現象に名前を付けた」ものだ。「なる筈のない音が鳴る」現象などは、身近な日常でも感じることの出来る怪異である。きっとこれからも音の怪談は生まれ続け、ユニークな設定を与えられ、未来にわたって生き延び続けるだろう。狸着信なら、私は何度も体験したことがある。

 図:尾田郷澄作『百鬼夜行絵巻』より


これにて、「百怪図鑑」とは被っていなかった「百鬼夜行絵巻」の妖怪をすべて描き切った。新たな妖怪絵巻に移ろう。