古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#047 覘坊 のぞきぼう

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覘坊

 先の投稿で江戸の僧侶の没落を描いたばかりだが今度は軽犯罪行為に及ぶ坊主が出てきた。妖怪でも何でもない、本当にこんな人が居ただけなのではないか。もともと垣根の隙間から気になる女性を見るという行為は「垣間見(かいまみ)」と言って平安時代には婚約者の見定めにために(公然と?)行われていたようである。その古き良き風習を今に残そうと頑張っている僧侶の妖怪では全くない。江戸時代の庶民の家には庭がほとんどないし。

 元の絵に少しヒントがある。服に模様があるのだが、蜘蛛の巣をあしらった柄である。イメージとしては、夜な夜な天井の隅に坊主が現れて張り付いたままじっと家の中を見回している。近寄ると影も形もない。大掃除の際に天井裏に大きな蜘蛛の巣が見つかり夏ミカンくらいの大きさの蜘蛛が見つかる。退治したところ、夜中の怪異はおさまったという。というような妖怪がイメージされているのだろう。

 坊主は聖職者であるから、はしたない行為をすると一般人がするよりも違和感が大きく気持ち悪い。確かに現在でも、お坊さんが駄々をこねたり、甘えたりする姿を見ると、気持ち悪いを通り越して、ぞっとする。昔、携帯の着信音を少女漫画の曲にしている方がいて、驚いたことがある。

 覗き坊なので、出歯ガメとひっかけて服に亀甲紋を描き加えた。見た目も少し亀に近くした。飛んできた行水用の手桶はおまけである。

 図:尾田郷澄作『百鬼夜行絵巻』より