古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#011 はゐら わいら

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わゐら

 絵は残っている。有名な妖怪絵巻にも乗っている。鳥山石燕も描いている。しかし、伝承というものが全く見当たらない。「わいら」という音から連想するものもない。描かれたものに共通する点は、以下のようなものだ。

・体の割には細い手に爪が一本。

・あちこちに瘤のある体。

・這う姿勢で、上半身のみ描かれている。

 誰が言ったのかはっきりしない、「山中でモグラを食べていた」という話がある。確かに二本の爪は土を掘り、土竜を突き刺すのに便利そうだ。なんだか大きな妖怪をイメージしていたが、結構小さい妖怪なのか。

 例えばだが、モグラは漢字で、「土竜」と書く。これを文字通り「どりゅう」と読む場合、地上の竜すなわち馬の意味になるので、山で馬をかじっていたことになる。この場合は、結構大きい妖怪だ。石燕の絵では、杉の木と対比して、かなりな大きさに見えている。小さな爪は、走る獲物をひっかけ、動きを止めるために使われる…

 それなら ティラノサウルスの特徴に似ている。大きな頭、体の割に小さな手、馬を食べるほどの凶暴さと大きさ。これはまさか、古代に生き残っていた、恐竜の末裔なんてことには…ならないだろうか。なったらおもしろいなと思う。

   あの時代の人がティラノサウルスを見て、後で思い出しながら絵にしたなら、確かにあのような姿になりはしないか。実際に見たからこそ、伝説など要らなかったのではないだろうか。

図:佐脇嵩之『百怪図鑑』より