古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#006 元興寺 がごぜ

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元興寺

 飛鳥時代、奈良の地にある元興寺に夜な夜な現れ、鐘楼に潜み、鐘をつきに来る童子を殺し続けた鬼。「雷神が農夫に命を助けられ、そのお礼に授けたという大力の童子」がこの鬼を退治し、その際に頭の皮をはぎ取ってしまった。残った血痕を辿った先には古い墓があり、もともとこの寺で働いていた男が死後、鬼と化していたことが判明した、という話が残っている。退治した童子のほうも「がごぜ」といわれる場合があり、区別のためか「元興寺の鬼」とも言われる。
 「がごぜ、がごじ、がんごじ、ぐわごぜ」等は、現在は妖怪一般をさす幼児語であるそうだ…私は聞かなかったが。とすると、この鬼は「元祖妖怪」とでもいうべき存在で、元興寺は日本妖怪誕生の地なのかもしれない。

 天狗や河童のように、元は神格を持っていて、後に妖怪に零落した存在ではなく、元は人間だったのが妖怪に生まれ変わった存在であるところが興味深い。和製ゾンビ、今なら元祖「バイ〇ハザード」だ。なるほどあのゲームは、日本妖怪話の根源に忠実なゲームだったのだ。確かに「人の過剰な変容」は根元的違和感、根元的恐怖を人に与える。その部分が世界中で大ヒットし、類似の世界観を持つコンテンツを多数産み出したのかもしれない。


図:佐脇嵩之『百怪図鑑』より