古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#007 ぬらりひょん

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ぬらりひょん

 「ぬうりひょん」が正しい表記だという話が一瞬上がって、幾つかの書籍ではそんな表記もされたものの、でも最近はやっぱり、「ぬらりひょん」でいいのだという。

   妖怪の総大将だという最近ではだれでも知っている設定は、戦後誰かがそう言ってしまっただけで、江戸時代にはなかった。(江戸時代、妖怪の総大将は見越入道ということになっている)他人の家に上がり込んで当たり前のようにお茶を飲んでいる伝承も、実は無いようだ(戦後のどさくさに紛れて、いつの間にか妖怪の総大将の座に、当たり前のように座っているところは有るが)。

 波間に浮かぶ海坊主の類だという話もあり、それは同名の別妖怪だよという人もいる。「ぬらりひょうたん」という表記もどこかで見た。設定が多種多様でその実態をつかむことが難しい。先にも触れたが伝説の類は持っていない。(海坊主のほうは昔話があるようだ)
 総じてとらえどころのない妖怪なのだろう。これ以上話をややこしくしないために敢えて私見であることを強調するが、見た目から察するに、禅宗の「瓢鯰図」からの連想のような気がする。「瓢箪を使って鯰をとらえなさい」という、哲学的な(?)命題である。頭ばかりが大きくなって、もはや一般人にとってな何の意味もないことしか考えない、そのような存在を妖怪に見立てたものだろうかと思う。

 

図:佐脇嵩之『百怪図鑑』より