古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

117 #以津真天 いつまで

1334年、建武の親政が始まった年、疫病が広く興った。政治的な混乱の中、遺体は長く放置された。すると「いつまでも、いつまでも…」と鳴く怪鳥が現れた。これを射落とすと、顔は人のようで曲がった嘴には鋸のような歯が並び、体は蛇体、で、両足の爪は剣のように鋭く、翼長は5メートルあったという。これは「太平記」で紹介された話だが、江戸時代に鳥山石燕がこの怪鳥を絵にし、その鳴き声より「以津真天=いつまで」と名付けた。

亡くなった民の供養の替わりに、生じた化け物を射落として解決するお上のやり方は、現代に通じるものを感じる。

 放置されたものがあると、「いつまで」と哭きながら辺りを飛び回る。そして、今の日本なら「放置される問題」には事欠かない。世の中は便利になる一方で、日に日に複雑になっていく。何かのバグが生じても、即時解決とはなかなか行かない問題も増えた。

 東日本大震災から12年。

1300万袋の汚染土は、問題の複雑さゆえ、未だ処分方も決まらぬまま、「一時的に」保管されたままだ。「いつまで」の声も、上がる度に打ち落とされているようだ。しかし打ち落とされる度、少し大きな「いつまで」が復活する。…何年先になるのか、その声が無視できない程に大きく成長したとき、状況は動くのだろう。

「いつまでも」と言う訳にはいかない。

 

尻尾の輪っかにマークを隠した。

天体は天王星。英語名はウラヌスだ。ある鉱物名を起想する筈である。