古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#069 馬肝入道 ばっかんにゅうどう

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馬肝入道

 姿からこの妖怪の正体を探るのは困難だろうか。黒衣で赤い目の病的な老人のように描かれている。入道と言っているが、その服装はむしろカトリックの神父を連想させる。そのあたりが絵解きの要だろうか?

 馬肝はその名の通り馬の肝。漢方薬の名前である。四つ足の物だから、当然仏教僧は食べない。馬に関しては「桜肉」という例外が九州にはあるが、人間にとって共に働く仲間であり、たとえ死んでもその体を食べるというようなことは大いに忌み嫌われていたようだ。この辺りは牛でも犬でも同じである。

 馬の肝を好んで食べる(例えば隠れキリシタンの)僧侶の存在があったのかもしれない。当時の人たちの目から見れば、それだけでもう十分妖怪として扱うべきものであっただろう。様々な差別も受けたはずだ。ちょうどドラキュラが生き血をすするのを見るがごとく、この特殊な癖を持つ老僧も「赤い目をして死人のような青白い肌をしている」と陰口をたたかれたのかもしれない。

 もっと突飛な説としては、今でいうところの「キャトルミューティレーション」との関連を指摘するのもいいと思う。馬の肝をくりぬく妖怪かもしれない。確かに見た目が、宇宙人に似ている。そういえばチュパカブラにも似ている。

 そう考えると、この妖怪は現在にも生き残っているのかもしれない。

図:湯本豪一蔵『化物尽くし』より