古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

♯番外編 アマビエ考

 アマビエについて書こう。
 1846年の瓦版に登場する。
 …毎晩海が光るため役人が確かめにいったところ、姿を現し豊作の予言と、もし疫病が流行った場合は自分の姿を写し、人々に見せなさいと言ったとか。
 遡ること2年の1844年にはアマヒコと言うタコのような怪物が同様の事を行っている。こちらはもっと過激な「人口の七割が死ぬ」という予言をしている。
さらに昔の1819年には、神社姫という人魚のような怪物が7年後のコレラの流行を予言している。しかし最初の世界的大流行が日本にまで及んだのは1822年のことで4年も早かった。

 アマビエの予言から48年後の1894年、香港からペストが世界中に広がった。北里柴三郎が活躍したのはこの時だ。それからも何度もペストは流行するが日本が壊滅的な打撃を受けたことはない。

 この頃ヨーロッパのペスト専門医は奇妙な格好をしていた。強い香りのするハーブや香料、藁などをつめた鳥の嘴のようなペストマスクが特徴的なこの装束は1619年にシャルル・ド・ロルムが考案した保護衣でパリからヨーロッパ全土に広がった。
 もし、役人が遭遇したのがペスト医師の姿をしたヨーロッパ人で、(役人だから少しは語学に明るかったかもしれない)会話のなかで、「私の姿を絵にして残せば、分かる人が見たら理解してくれるだろう。沢山の人に見せなさい」と言ったとしたら?

 現在のアマビエは私にこう言っているようだ。
 私の姿をお菓子など商品化して人を集めるのはよしなさい。何が正しいのかを考えなさい。神の力の及ぶ時代は、あなた方がその手で終わらせたのではないか?
 あなた方は、未知に謙虚になりなさい。

 妖怪が本質的にゆるキャラでないことは知っておく方が良いように思う。絵は何も祈らず何も考えずに描いたのでなんのご利益もないが、この怪について自分の理解するところを形にした。f:id:youkaigakaMasuda:20200506101712j:plain

♯アマビエ