「憎らしい」を調べると、意味は二通りある。
1、気に障って許しがたく思う様。
2、気に障るほど素晴らしい。
とある。ただの「憎い」ではなく、「惹かれる気持ちと同居する」憎さ、劣等感の裏返しのような感情を指すことが多い様に思う。つまりは「嫉妬の感情」である。
為憎は嫉妬の妖怪であろう。女性の姿で描かれているので、嫉妬もその方面、美しさや愛情の方向に関するものを意識しているようだ。西洋でも嫉妬、特に女性の男性に対する嫉妬は、「緑色の目の怪物」と呼ばれている。有名なおとぎ話でも、魔法使いの女王をして白雪姫を追い詰めさせた感情は「美しさに対する嫉妬」であった。
嫉妬は人を狂わせる、という。つまり嫉妬ゆえに、人は非合理な行動へと駆り立てられるという事である。ここが嫉妬が「妖怪」として紹介される所以であろう。確かに嫉妬に狂う人の行動には、第三者から見れば理解に苦しむ「妖怪的な」ところがあるのは確かである。
嫉妬が生んだ妖怪か、嫉妬を産み出す妖怪か。まさか、周りから嫉妬を受ける妖怪…という発想は無いな、さすがに。
図:湯本豪一蔵『化物尽くし』より