古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#017 山姥

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山姥

 山奥に棲むという老婆の怪。野生の熊も顔負けの怪力を持っていたり、変身するなど妖術を使ったりと太刀打ちできる相手ではないので、正面から戦って人間が勝った話はないと思う。(お坊さんがうまく騙して小さくさせ、餅に引っ付けて食べてしまった話があるくらいか)婆の字を使っているが、年齢も様々。さすがに少女の山姥は聞いたことがないが、頭に二つ目の口がある「二口女(飯食わぬ嫁様)」も山姥である。「山姥の錦」のように男の子を産んだばかりの母親として登場する話もある。

 敵に回すと恐ろしい反面、味方につけると非常に心強く、山姥から福を分け与えられる話も多い。恐ろしくもあり、頼もしくもある。古代の人が「山」をどう捉えていたかが良くわかる妖怪だと思う。だから山の妖怪の中では、どちらかというと人間よりの妖怪である。

 因みに、妖怪文化は江戸時代までは男性文化だと思っている。つまり男性目線で、「怖いもの・不思議なもの」が妖怪として登場しているということだ。だから人間の姿をした妖怪の中では「〇〇婆」が圧倒的に多く、次が「〇〇女」である。男が怖いと思うのは女性で、しかも「美しさ=魅力」を失った女性つまり「婆」が一番怖くて理解不能だからではないかと思っている。今でも妖怪全般を見渡すと、女性の妖怪が多いように思うが…最近、妖怪が男性のみの文化から、女性も含む「若者文化」に変わったなと思っていたら、「〇〇おやじ」という妖怪の名称が激増した。そして、水木しげるが大好きだった少年の私は、気づけば妖怪の仲間入りをしていた。つまり40歳を超えた。

図:佐脇嵩之『百怪図鑑』より