「化物之繪」という変わり種の妖怪絵巻がある。この絵巻物は現在日本にはない。海外の美術館の所蔵品なのだ。内容としては「百怪図鑑」図鑑の妖怪がほとんど同じ姿で(しかもとても美しい腕前で)描かれているのだが、数体ほど、出展の違う妖怪画が追加されいるので、それを紹介していこうと思う。
海坊主は、海のある地方には必ずある妖怪の伝説。大きい体で海中からぬっとあらわれ、船を転覆させるという点はどの地方でもほとんど同じだ。クジラを連想させる妖怪だが、この絵巻物ではなんと鯰の姿で描かれている。クジラでは「妖怪ではない」と思われたのだろうか。それとも地震と大きな関係がある海坊主の伝承があったのか、津波と地震の関係を暗示しているのか、奥が深いかも知れないデザインである。
図:ブリガム・ヤング大学付属ハルド・B・リー図書館蔵「化物之繪」より。