古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#020 山わらわ

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山童

 やまわろ、のこと。山に出現する妖怪で、伝説は多くあり、河童と一部を共有している。夏は川にかいって河童となり、冬は山に入って山童になるというような、両者がほぼ同一のものとされている伝承もある。山で仕事をしている人のもとに現れ、重たい木を運ぶなどの作業を手伝ったり、邪魔したりするとも言われる。山の天気のように気まぐれな妖怪だ。

 仕事を手伝ってくれる時も、いろいろな注意点があって、お願いの仕方やお礼の仕方など、一つでもうっかりすると怒って邪魔をしたり、役に立たなかったりする。お化けの使い方にもノウハウが出来上がっているところが面白い。妖怪ではなく、本当にそういう集団が山に棲んでいたのかもしれない、と思う。

 一つ目、または片目で描かれることが多いのは、恐らく1本ダタラなどの山の妖怪とも同じルーツを持っているからだと思う。「山の妖怪には一つ目の物が多い」そうで、これは鍛冶と関係が深いらしい。

 参考にしている妖怪絵巻では「山わらう」と表記されている。崩し字なので何通りかに解釈できるようだが、「山わらう」は俳句に使われる春~初夏にかけての季語である。山の木々が一斉に葉っぱの芽を出して、山全体がさわやかな緑に包まれた状態のことだ。それもまた、この妖怪の側面の一つなのかもしれない。

図:佐脇嵩之『百怪図鑑』より