古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#025 幽霊

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幽霊

 「…幽霊は妖怪じゃない!」という思いはあるが、佐脇嵩之の『百怪図鑑』には載っているので紹介する。気付く人は気づいていると思うが、この「怪説」は今のところ「百怪図鑑」の妖怪をそこに描かれている順に描いていっている。さらに他の有名な妖怪絵巻からも題材をつないで合計百体描いている。

  私個人の意見はさておき妖怪として幽霊を紹介する。まず、妖怪というのは現象名詞で、起きた怪異の正体を「仮に妖怪と置いて」その「妖怪」に名前を付けていくものだ。だから、同じ現象であれば同じ名前が適用される。「河童」「ガータロ」「オシッコサマ」「ケンムン」「ガラッパ」などが「同じ妖怪だ」と認知されるのも上記の妖怪の定義による。有名な某マンガでも「妖怪の仕業だよ」というように「妖怪」と「仕業」は一体のものだ。

 さて幽霊は「肉体を失ったのに影響力または存在感を失っていないような行動が起こせる存在の怪」と定義できる。他の動物が同じような状態になった場合、それは「化けた」と言われ、「化けたもの」は妖怪のカテゴリーに入ることが多いのだから、動物人間の差別をしないのなら「化け人間」の一形態である「幽霊」は立派な妖怪と言う事になる。「番町皿屋敷」で有名なお菊さんなど、固有名詞があるのに、その伝説がなぜか日本中にあり、割れ残った皿だけでも合計30枚以上あるので、(10枚セットの皿だから、うち3体までは成仏できる計算だが)お菊さんも実は「お菊さん現象:皿を割って死んだ女性が化けて復讐する怪異」となり「花子さん」と同じく妖怪扱いと言う事になる。

 昔の人がそこまで考えて描いていたかは、知らない。

図:佐脇嵩之『百怪図鑑』より