古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#024 目一つ坊

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目一つ坊

 どこで聞いた話だったか。たぶん最近の妖怪の研究本なのだが、比叡山の僧がその死後も弟子の修業を見守るために一つ目の鬼となって僧坊を周った。特に居眠りを戒めた、という情報をもとに描いた。右上に描いたのは天井からつるす「魚板(ぎょばん)」と言われるもので禅寺などではこれを鳴らして時刻を告げる。魚の目には瞼がないので常に目をパッチリ開けておきなさいという意味が込められている、という説が気に入られている。読経の際に鳴らす木魚にも同様の意味が込められている。

 一つ目の大入道の出てくる話は多い。タヌキが化けたものも入れるとさらに多い。とてもイメージのしやすい「恐ろしい姿」なのだと思う。実際出会ったら、大入道であればその目が何個かはあまり気にならない気もするが・・

 一つ目妖怪について。どうも「片目」と「一つ目」の両方がいて、どちらも「一つ目」と呼ばれているように思う。山の妖怪で一つ目の物は、大体「片目」であるようだ。鍛冶の神は燃えさかる炉を見すぎて片目を悪くしてしまい、一つ目になった。そんな話が源流となり、山の一つ目妖怪が増えていった背景があるからだという。

 描かれた一つ目妖怪達は、顔の中央に目がある場合でもよく見ると目の形で右目か左目か判別できることが多い。と言う事は片目なのだろうか。上の目一つ坊も、元の絵を見るに、恐らく左目である。私は左右対称に描いた代わりに目の下のしわを工夫し「三つ目なんだけど下の二つの目を閉じているから一つ目に見える」ように描いた。誤解の無いよう告白しておく。

図:佐脇嵩之『百怪図鑑』より