古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

109 #泥田坊

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酒浸りのダメ息子が、売り払ってしまった田んぼに夜な夜な現れ、「田をかえせ!」と叫ぶ。親父の怨霊が妖怪化したものである。一つ目で、泥まみれである。
愛好家、研究家達の手によってかなり研究、分析が進んでおり、鳥山石燕が創作した、遊郭を風刺する妖怪なんだという。その辺りの話は専門家に譲ろう。
妖怪画家としては、腰から下がどうなっているか描いてみたかったので、泥の中に沢山居るミミズと、雨が降ったら顔を出す茸のたまごを組み合わせた。湿度にこだわったら、癖になる気持ち悪さを持った作品になった。
泥はその存在自体がもう妖怪に近い。視覚、触覚および嗅覚で感じとる気持ち悪さと不快感。温暖湿潤気候ならではの妖怪に思える。日本の妖怪の特徴かもしれないが、自然界の、風土や植生が妖怪のデザインに大きく影響を与えているように思う。タンコロリンやかに坊主など、西洋ではちょっと考えられない。
泥田坊は、そういう意味に於いて、非常に日本らしい妖怪なのかも知れない。