江戸時代に実際に多発した事件がもとになって描かれたと思われる妖怪。夜中に道を歩く人の髪の毛…髷や元結を切り落としてしまう。男女の見境もなく襲われ、切り落とされた髪の毛はそのまま地面に落ちている。よほど鋭利な刃物を使うのか、髪を切られる瞬間が相手に気づかれることはなく、いつの間にか髪の毛が切り落とされている。
以上の怪談を知った上でこの絵を見れば、全く納得のいくデザインだと思う。手の形がハサミになっているほか、くちばしもハサミをイメージしたデザインになっている。昆虫もカミキリムシがその正体とされたこともあったらしく、少しく虫を連想するフォルムもいい。そのあたりを強調して描いた。
どんな妖怪かがわかっているものの方が、解説が短くなってしまう。あれこれ想像する余地が少ないからだろうか。
図:佐脇嵩之『百怪図鑑』より
ここまでの妖怪が、元禄時代に描かれた、佐脇嵩之作『百怪図鑑』に登場した妖怪達である。当時の妖怪たちの、「メジャーどころ」の集大成とでもいうべき妖怪絵巻だった。
次からは新しい妖怪絵巻を題材に描いていく。同じ描き方で描いた妖怪画でも、印象が変わるので、面白いと思っている。