古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#003 ひょうすべ

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ひょうすべ

 佐賀県、宮崎県、熊本県などで山を中心に活動している河童の類。沢などを群れで渡るときに、ひょうひょうという鳴き声が聞こえてくる。描かれた姿は河童というより、頭部に毛が無いサルのように見える。
 伝説の少ない妖怪の常として、後世のライターが、どこで確認したのかわからない性質を付け足すことがある。たぶん意図的な創作で、読み物を面白くしたかっただけだと思われるが、特に戦後はひどい。ウルトラマン怪獣がはやった時代に、たくさん妖怪図鑑も出版されたのだが、今思えば妖怪伝説創作の全盛期だったように思われる(怪獣時代の妖怪は、とにかく人を死なせる能力が大幅に追加されている印象がある)。

   妖怪文化は「二次創作の文化」といってもいい。キャラクターとしての妖怪に著作権はない。好きに付け足された設定の中でも優れたものはいつの間にか市民権を得、次の時代に引き継がれる。
 そんな時代の妖怪本によると、ひょうすべはキュウリよりもナスを好み、人に会うと「ひっひっひ」と笑ってくるが、つられて笑うと死んでしまうらしい。爪には猛毒があるらしい。
図:佐脇嵩之『百怪図鑑』より