古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

#065 ぬりかべ

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ぬりかべ

  海外の博物館にある日本の妖怪図鑑のなかに「ぬりかべ」と言う名前が発見され、少し前に話題になった。

 おそらく通行人の目の前に、そんな所には無い筈の壁のようなものが急に立ちはだかる怪異だったと思われる。壁は見える場合も見えない場合もあるようだ。社会的な「見えない壁」は至るところにあると言えるが、それらが全てこの妖怪の仕業なら今は大活躍の最中だ。絵巻物には角の取れた餅のような、鼻の平たい象のような姿に描かれている。

  壁が出てくる昔話。ネズミの夫婦が一人娘に世界一の婿を与えたいと婿探しの旅にでる。まずは世界を照らす太陽のもとに。しかし太陽は「私を覆い隠す雲こそ1番強い」と告げ結婚に応じない。そこで雲を訪ねると、「私を吹き飛ばす風が1番強い」。そこで風を訪ねると「私を防ぐ家の壁が1番強い」そこで壁を訪ねると「私を齧って穴を開けるあなた達ネズミが1番強い」そこでネズミはネズミと結婚した、と言うお話。背景に描いた諸々はこの話を下敷きにしている。

  ネズミは、最近よく壁に描かれている事が話題になった。しかもこのネズミが描かれると壁の値段がつり上がるので、あやかりたくて私が描きました。盗難は勘弁していただきたく。

  図:ブリガム・ヤング大学付属ハルド・B・リー図書館蔵「化物之繪」より。