古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

113 #釣瓶下ろし


木のてっぺんから釣瓶のようなもので人を引っ張りあげ、食ってしまう妖怪。最後に犠牲者の首を落とすとか、いやいや落ちてくる首が妖怪で、その首は大きくて、落ちるなり大越でゲラゲラ笑い出すとか、とにかく形の定まらない妖怪だ。誰かが書いていたつるべ火の話にあったように、木が妖怪になったものかも知れない。
通行人がいきなり引っ張りあげられるスリルは、洋画等に登場するトラップのイメージに通じる。
絵巻物等に姿を残している妖怪ではない。だから、どんな姿を与えても、怒る人は…少ないはずである。作品中にも敬意を込めて描き加えたが、水木しげる公の有名すぎるあのデザインは、何かのお面がモデルになっているそうな。それ欲しい。首が妖怪で、落ちて脅かしてくるタイプだ。
鬼が引っ張りあげて頸を落とすタイプの絵には、まだ万人が認識できるイメージを持たない。だからどの様にも描ける。今風に言えば、ブルーオーシャンだ。
大津絵に、太鼓を地上に落としてしまい、鉤針で引っ掻けて引き揚げようとする雷のモチーフがある。それを見たときに、これは釣瓶下ろしだ、と勝手に直感した。そのイメージを中心に据え、鉤針で引っ掻けて獲物を取るならアンコウとかワナゲグモだなあと考え、木の上に居るから蜘蛛にした。
後は釣瓶の言葉遊び。
朝顔に釣瓶取られて貰い水、とか、
秋の日は釣瓶落とし、とか、
雁は(狩りは)カギになっている。鉤で人を狩る鬼だから。などなど、
元々が雷だったので、雷紋の入れ墨、三つ巴の模様も着けた。
描くだけ描いて、我に返れば、ブルーオーシャンは雑念によりかなり濁っていた。