古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

114 #枕返し

寝ている人の枕を、足元の方やあさっての方に転がしてしまう妖怪。そんな事しかしない、とは思えない程の仰々しい姿をしている。

 鳥山石燕が描いた妖怪のうち、その姿が市民権を得なかった数少ない一例。何故かと言うと、画図百鬼夜行に掲載された絵が、薄すぎて、何を描いているか判らないからである。しかもどうやらかなり細かいアイコンらしいのだ。

 そこで私には珍しく、パソコンの力を借りた。ネット上の「石燕の枕返し」の画像をダウンロードし、フォトショップで加工し、コントラストを着けて線をはっきりだした。その図をもとに下書きをして、それでも良く判らないところは、仁王像の画像を参考にした。

 改めて、かなりバランスの良い絵であったことが判った。ポーズも衣もそのまま写した。

 水木しげる氏の採用した、今や完全に市民権を得た枕返しのデザインは、2パターンとも、元のイメージのエッセンスを保ちつつも、別物であったことが判る。

 話を最初に戻す。容姿から察するに、「枕を返す」行為に民間信仰的な意味があったのは間違いなさそうだ。枕は魂の容れ物だ、と言った話も聞く。それを動かすと、何がどうなるのか、明記された文献は無いようだ。落語の「死神」をヒントにするなら、最悪死んでしまうと言うことなのか。

 または、古語の「かへる」には色褪せる、ぼろになる、という意味もあるから、枕を古くするだけの妖怪だったりするのかも知れないが。

しかしこの姿なのである。