古今妖怪図鑑

妖怪しか描かず、妖怪を哲学する、妖怪画家のブログ。妖怪しか描きませんし、妖怪の事しか書きません。

139 #貧乏神

死神、風の神(疫病神)と来れば、もう描かない訳には行かないな、と思い描くことにした。

個人的にも付き合いの長い神様であるし、イメージは既に頭の中にあった。

水木しげるサマも、「妖怪なんでも入門」の解説に「貧乏神が一番怖い」と挿絵つきで(半ば文脈も無視して)書いているので、その実力は絶対的に確かである。

驚くべきことに、他の二神と違い、吉祥天の妹(女性!)と言う、ちゃんとした天界へのルーツを持つカミサマである。人の世界におりてきてからは、見るからに貧乏な老人の姿で知られている。焼き味噌が好きで、匂いを嗅ぐためか、片手には団扇を持っていると言う。

 ちなみに、天部での名前を「黒闇天」といい、詳しくはないのだが貧乏と言うよりは不幸・災難の神様のような印象だ。真言もあり、カララ・チリ・エイ・ソワカ、だそうである。(詳しくないから受け売りである)「人頭杖」と言って、閻魔大王の横に立ててある、人の頭が乗った杖を、普段は持っているらしい。閻魔大王の三人いる奥さんの1人でもあるらしい。

更にそのルーツはインドにまで遡れ、カーララートリと言って、え、シヴァ神の奥さんなの?違うの?もう良く判らない、となる。こんな絵にしてしまった事が、実に恐れ多い階級のカミサマだ。

 貧乏は、金がないと成り立たない概念だ。モノ有ってこその物欲。「有るモノ」が「無い事を知る」からこそ起こる物欲。知らない何かを欲しがる気持ちは起きない。だから、このカミサマは、まずは人間に富を授けるのではないか。姉が吉祥天だ。その力はあるはずである。そして、「有るモノ」に慣れた頃合いを狙い、それらのモノたちを奪っていくのだ。

だから金の杖を装備させた。まずは富を与えるためだ。

背後には「火の車」を配置。

「赤地=赤字」に変わり行く「金雲=金運」もトッピング。

服の紋様は「ペンペン草」

手に持っている団扇には、黒闇天を表す梵字を記した。

何処かに「オケラ」の意匠も入れたかったが、煩すぎるから、やめた。

西洋の図象学を齧ったことがある。判じ絵や、見立ては大好きだ。だから私の絵は、いつもこんな感じだ。