昔、賀茂の大路を、朧月夜に車の軋る音を立てるものが居た。出て見てみると異形のモノだった。車争いの遺恨であろうか。とは、これを最初に絵にしたと思われる鳥山石燕の言葉。
受験シーズンも大詰めである。
学生は名門の席を取り合っている。ある桜は咲き、ある桜は散る。「サクラサク」は、電報用に作られた言葉だと聞いた。「ウカル」にしなかったあたり、日本の心を感じる。
人は場所を取り合う生き物である。当然勝ち負けがある。負けるところには遺恨がのこる。平安時代には牛車で、花見や祭りの場所取りをしたらしい。今は新入社員にやらせるところ(流石に今は無いだろうか)、牛車にさせるあたりが何とも貴族であるが、それゆえに所有者の見ていない内に、他人が勝手に車を動かしてしまうトラブルもあったようだ。これ則ち「車争い」である。
現代ならまずは花見、受験、初売りの行列に潜んでいそうな妖怪だ。せめて花見の争いくらいは、桜を愛でながらのどかにやって頂きたい。
そんな絵。